 |
Vol.09 魅惑のウィーン菓子 |
 |
| 甘さ控え目が人気のコンディトライ「オーバーラー」のお菓子 |
|
秋になると美味しい食べ物に心が沸き立ちますね。ウィーンは「音楽の都」であると同時に「お菓子の都」としても有名な街です。ウィーンに最初のお菓子が伝わったのは10世紀ごろと言われていますから1000年以上も前のこと。婚姻によって領土を拡大していったハプスブルク帝国の都ウィーンには各地から様々な食文化が集まってきました。
16世紀に皇帝フェルディナント1世がスペイン、ボヘミア(チェコ)などから菓子職人を呼び寄せ宮廷菓子の基礎を築いたと言われています。日本ではマリー・アントワネットの母親として知られる女帝マリア・テレジアは大のお菓子好きで、1741年にはウィーンの宮廷の中にお菓子専門の部門を設立し、そのお菓子部門は1912年まで存続したというのですからお菓子がハプスブルク家にとっていかに大切であったかがわかります。昔はお菓子に使う砂糖やカカオが大変高価だったため、どれだけ砂糖を使えるかが宮廷の富を誇示することになったようですから、お菓子にこだわったのはそうした事情があるのかもしれませんね。
ウィーン菓子はこのように長い歴史を持ち、現在でもお菓子が考案された時代とほぼ同じレシピで作られているのが特徴です。ウィーンには今も「皇室御用達」と看板を掲げたコンディトライKonditorei(高級菓子店)が何軒もありますし、同じお菓子でもお店ごとに味が異なりますから食べ比べるのも楽しいものです。とはいえ、昨今はウィーンでも本当に美味しいお菓子を食べられるお店が少なくなってきました。現代人の嗜好に合わせて味も変化せざるを得ないかもしれません。
菩提樹では美味しい伝統的なウィーン菓子を紹介したいと、開館当初から定期的に「ウィーン菓子とその歴史」というイベントを開催していますが、回を追うごとにウィーン菓子に夢中になるお客様が増えてきました。日本ではフランス菓子が中心、ふわふわのスポンジケーキやムース、クリームたっぷりのケーキが好まれますが、ウィーン菓子は小麦粉やバター、チョコレートといった素材の味が生きるどっしりとしたお菓子が多く、舌の肥えたお客様も絶賛しています。これまでにご紹介したお菓子はSchneeballen(雪玉)、Kardinalschnitten(枢機卿のケーキ)、Topfen(チーズ・ケーキ)、Sachertorte(チョコレート・ケーキ)、Mandeltorte(アーモンド・ケーキ)、Kuerbistorte(かぼちゃのタルト)、そして今年11月にはApfelstrudel(リンゴのお菓子)が登場しこの先も続く予定です。
しかも菩提樹のためにお菓子を焼いてくださるのは、本場ウィーンの菓子職人をもうならせたことがある高橋さん。ウィーンに憧れていた私が初めてウィーン菓子を口にしたのは、昔、高橋さんが名古屋市の中心で経営されていたカフェでのこと。その美味しさの虜となり、その後実際にウィーンに行くようになって、ウィーンの有名菓子店で食べるお菓子よりも高橋さんが作るウィーン菓子の方が美味しいことに気づきました。お菓子以外にも芸術や各国の文化に大変造詣の深い方ですし、彼の長い経験と食に対する熱い想いが小さなケーキにたっぷり詰まっているということも皆様に知って頂きたい。そこでイベントの際にはお菓子を食べる前に高橋さんのレクチャーを聞いて頂くようにしました。
菩提樹ではウィーンのインテリアに囲まれてウィーン菓子に舌鼓をうちながらウィーンの音楽を楽しむことができます。ウィーンにいてもなかなか体験できない贅沢な時間です。本当にウィーンの文化を理解しようと思ったらウィーン菓子を知ることも大切です。モーツァルトやベートーヴェン、シューベルト、マリア・テレジアやエリーザベト皇妃が口にしていたお菓子を知ることになるのですから!
|